114.来訪者たち

第三部 魔人編

第一章 Happy Spring Day

114 来訪者たち

 私たちが地球に来た当初、CCの建物は大きく穴が開いていて空が見えていた。
 そしてなにかがうごめいているように感じた深く暗い内部には様々なものが転がっていて、まさに荒れた建物だったわけだが。
 今足を踏み入れても天井には汚れひとつ見つけることはできないし、広々とした場所には柔らかく光が入り込んでいる。

 CCにはもともと一階部分に広い庭があった。
 私たちが乗ってきた宇宙船は地下に置いていたが、光が多い場所のほうが都合がいいため庭の一番明るい場所に移動してる。
 ポルンガによって修復された当初こそ多種多様な植物が生えていたらしいけど、今は大体引っこ抜かれたみたいで数は少ない。代わりにテーブルや椅子などが置かれている。
 まるで現場作業員が来る食堂。そんな様相に変わっていた。

「俺も? ……いいの?」

 食卓の一つを皆で囲うように座り、悟飯さんが丸い目をぱちぱちと瞬いた。

「も「いいに決まってんじゃん」……どうぞ」

 返事をしようとしたらトーガが思いっきり被せてきた。

 今更なんだけどトーガは悟飯さんに気安く話しかける。
 二人でいろんなところをまわったって聞いたから仲良くもなるか。
 現に今、トーガの隣に座ったし。

 っていうか左隣トランクスさんだわ。悟飯さん、トーガとトランクスさんの間か。
 ……大丈夫かな。
 そこら辺の皿、即空っぽにならない? 空っぽになったとたんケンカとかならないよね……。

 地球に来た頃あったんだよなあ。トーガの隣にトランクスさん座ってたら二人で食べつくして、トーガが「なに人の分まで食べてんだよ」ってトランクスさんに突っかかっていって……。
 じゃあトーガの代わりにってチルを隣に座らせると、甘いものが食卓に出た時に同じく険悪になるから、トランクスさんの隣はブルマさんと私で固定されたんだよな……。
 双子だけでケンカになったときは〈氷〉で黙らせたけどトランクスさんが絡むとめんどいことこの上ない。
 ……悟飯さんならそんなことならないのかな。

「すごい量だなあ。こんなに料理が並んでいるのは久しぶりに見るよ」

 考え込んでたら感嘆としたふうに言われた。
 そんな大したものは出してないんだけど。
 テーブルの上には炊きたて白ごはんと具沢山スープ、ソーセージにサラダはお馴染みで、〈かばん〉の中にあったいつ作ったか記憶にない煮物とか味付け玉子等とりあえず食べられるものを並べている。
 5人で食卓を囲んでいた時よりも品数は少なく、でもその時より一品あたりの量が多い。
 米を多く食べてもらう予定だからご飯に合うお供も出しておこう。

「これうまいよ」
「これもおいしいよ」
「あ、ありがとう」

 トーガとチルがいつぞやみたいに悟飯さんの皿におかずを積み上げていく。

「あちらでは食べなかったんですか?」

 トランクスさんはトーガたちが焼いた肉をそぎ、山のように盛りつけた皿をテーブルの真ん中に置いた。

「界王星のことかい? あそこは食べなくてもいいから、父さんとベジータさん以外あまり食べなかったなあ。だからこういう手の込んだものは本当に久しぶりだ」

 ソーセージをキラキラした目で見られても。
 既製品ですよ。20年前の。
 かぶりついた悟飯さんはにっこり微笑んだ。

「悟飯さんはチチさんのところには帰ってないんですか?」

 私はお茶を注ぎながら悟飯さんに声をかけた。
 疑問だったのだ。チチさんはソーセージなんか目じゃないくらい手の込んだものをさくっと作ってしまう。
 生き返ってから一週間以上経っているのにソーセージに目の色を変えるなんて意外過ぎる。

「家に行ってみたけど誰もいなくて……生き返らなかったみたいです。残念だけど」
「オレらの親と一緒に生き返らせればいいじゃんか」
「生まれ変わってなければできるけど、どうだろう。天国にはいなかったし……地獄には行ってないと思うんだけど……」

 そこでシーンとなってしまった。

 チチさんかあ。
 過去での自分の所業が思い出されるとともに謝罪の気持ちがふつふつと湧いてくるがそれを押さえる。
 思い出すと泣いちゃうし……。

 うーん。死んでたら生き返らせる気満々だけど、生まれ変わってる可能性もあるのか……。
 私はそっと意識を悟空さんの家周辺に向けた。
 するとぽつんと気配があった。明らかにチチさんである。

 ……普通に生きてるっぽいけど。
 教えてあげてさっさと迎えに行ってもらったほうが――。

 なんて考えていたら、玄関側が騒がしくなってその喧騒はすぐに食堂に移動してきた。

「やっほーサーヤちゃん! トランクスも!」
「おっ悟飯! ここにいたのか!」
「食事の最中すまんな」

 やってきたのは白のチャイナ服を着たヤムチャさんと、厚手だけどカジュアルな服装のクリリンさん、チャイナ服なのかわからないけれどしっかりした服を着た天津飯さんにチャオズさんだった。

 なぜそんなパリッとした服装?
 我々はTシャツとかスウェットという簡素な服だというのに。

 全部ブルマさんがくれた衣類で、軽くて着易くて汚れても代わりがすぐ手に入るのが利点。絶対どこかにカプセルコーポレーションって書いてあるのが難点。
 チルだけは“BURUMA”と書かれた着る人を選ぶワンピースを着てる。
 私はちょっと無理だった。胸元にデカデカと人の名前が入ってるピンクのワンピースを着る勇気はない。

 そんなザ・作業服な私たちと明らかに余所行きな服装の方々、あまりにもレベルが違いすぎる。
 軽く頭を下げて挨拶するもじっくり見てしまう。

「どうしたんですか? 皆そろって」
「ブルマさんに呼ばれたんだよ。てっきり悟飯もかと思ったけど」
「人手が足りないから皆を呼ぶとは言ってましたよ」

 きょとんとしている悟飯さんとクリリンさんへ早くも肉を食べ終えたトランクスさんが答えた。
 チルとトーガは一瞬ヤムチャさんたちを見たが、早くも興味を無くし口の中に物を詰め込むことに夢中だ。

 天津飯さんが首に巻いていたマフラーを取りながら悟飯さんに声をかける。

「住込みで手伝えとお前がこの間持ってきた手紙に書いてあったぞ」
「そういえば……あの手紙そうだったんですか」
「お前知らないで俺たちの所まわってたのか?」
「いやーあはは」

 誤魔化すように悟飯さんは笑ったけれど、誤魔化せていないところがそれらしい。

 ……ん? まて? 今住み込みって言った?

「おい。これお前が作ったのか」
「え?」

 声かけられて横を向けば、いつの間にかチャオズさんが隣にいてトマトが乗っているサラダを見ている。

「え、ええ。切ったりはしましたけど」

 肯定すればチャオズさんは他の料理を見て首をわずかに傾けた。

「食事はお前が用意してるのか」
「あー、まあ、そうですね。今のところ」
「ふーん。わかった」

 なにがわかったんだ。
 私の疑問は晴れることなく、チャオズさんはさっと天津飯さんのところに行ってなにやら耳打ちしている。

「いやー思ってたよりあったかいし、水も食料も問題なさそうでほっとしたよ」

 ヤムチャさんが上を見回して食卓を覗き込んだ。そしてなぜかキラキラした目で私を見る。

「しかも食事はサーヤちゃんお手製ときた!」

 ははあ。もしかして私が宇宙人だから珍しい料理を出すと思ってる?
 期待するほど出ないよ。

 しかし過去では初対面から睨みつけんばかりにきりっとした顔をしていたのに、なぜこのヤムチャさんはニヤニヤしてるんだろう。
 態度が違いすぎてビビるんですけど。

「うん。住む」

 いやいやいい笑顔で言われても私としては御免こうむる。
 CC従業員+ブルマさん+双子+トランクスさんの食事を用意するのは想定内だけど、これ以上増えるのは契約違反だと思うんです。特に格闘家さんは普通の人の三倍は軽く食べますよね??
 過去の亀ハウスでチチさんとご飯支度した時より遥かに量が多い。無理無理。
 私はトランクスさんに抗議の視線を送ったが、まったく気づかれなかった。

「あの……皆さんここに住むんですか? 今日から?」

 確認すれば各々頷いた。

「悟飯さん! チチさん生きてるので確認しに行きましょう!!」

 私は立ち上がって悟飯さんに訴えた。
 とてもじゃないが病み上がりにはキツイ業務内容をたった今知ったからだ。
 社畜も逃げ出すブラックさ! いや、社畜のほうが金もらえるからまだマシ!

「過去でチチさんの気配は覚えてるので間違いないです! ご飯食べ終わったら一緒に行きましょう!! そしてここに来てもらいましょう!!!!」
「え、えっ!?」
「行ってきた方がいいんじゃないか? ほら、地下に埋もれてるかもしれないだろ。チチさんなら自力で出てこれそうだけど」

 悟飯さんはクリリンさんの「埋もれてるかも」のところでハッとなり、立ち上がった。

「すぐ帰ってくる? オレ、悟飯さんと北に行く約束してたんだけど」
「見つかったらすぐに帰ってくる」

 トーガは「ふーん」といったきり、食事に戻った。

 チチさんが生きているなら迎えに行く。これは絶対だ。
 本音としては今日の夕食準備に間に合って欲しい。
 屈強な男数人増えた食事支度なんて私一人では絶対無理。

「トーガ、二人について行ってくれないか」

 過去の亀ハウスでの作業量を思い出して胃がキリキリしそうになってたら、トランクスさんがトーガに向かって口を開いた。

「オレも? なんで」
「また倒れるかもしれないから」

 チルがバッと私を見た。
 なんか目で訴えられてる気がする……。倒れたの?って。
 違うぞ!?

「倒れませんよ。なんですかその倒れたことがあるみたいな言い方」
「過去では倒れたでしょう」
「あれは転んだんですー。倒れてません」
「絶対に違う……」
「ちょっとーなに騒いでるのよ」

 ブルマさんがガラガラとなにやら小さめのコンテナを4つ乗せた台車を引いてやってきたことで、トランクスさんとの話し合いは途切れた。

「あー! アンタら遅い! こちとら暇じゃないのよ? 来たならさっさと知らせなさい! トランクス、住居用カプセル庭に出して。除雪はアンタたちがやるのよ! チル、食べてからでいいから5人R3地点に運んでちょうだい。あとサーヤ、これ食材。台車はロビー側の廊下に出しておいて。トーガは……うん、たくさん食べなさい。――よし、働きなさいよ!」

 てきぱきと指示を出し、最後にびしっとヤムチャさんを指差してブルマさんは颯爽と去っていった。
 嵐かな?

 ブルマさんがいなくなるとヤムチャさんが「あーあ」とこれ見よがしに溜息を吐いた。

「見つかっちまった。早かったなあ」
「ヤムチャのせいだ。こっちに行くっていうから怒られた」
「だから先にブルマさんのところに行きましょうって言ったのにー」
「話していても仕方がない。さっさとやってしまおう。トランクスはまだかかるのか?」
「いえ、一緒に行きます」

 どうやら4人はさっさと作業に向かうようだ。
 トランクスさんは立ち上がり食器を片付け始める。

 あ、食材を〈かばん〉に入れておこうかな。

 コンテナ自体は私でも持てた。ちょっと重かったけど。
 中身を確認すると一段目には芋やニンジンなどの根菜と袋に入った肉が入っていた。
 台車の上から〈かばん〉を広げて一段ずつ入れていると、トーガの「わかったって」という声が聞こえる。
 声がした方を向いてもすでにトーガは肉の塊に噛り付いており、私は疑問に思いつつも再びコンテナを〈かばん〉に入れることにした。


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