第二部 人造人間編
第二章 過去へ
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「うそっ!!」
大きな声に驚いたのか、トランクスさんは目をまん丸にしてブルマさんを見ている。
「もう少し下だと思いました……」
「そのナリで15歳なら望みないわね。トランクスーロリコンにはならないでねー」
「なっ!?」
「赤ん坊になんつーこと教えやがる」
ヤジロベーさんに完全同意した。
ブルマさん若いとき言うこときつい!
「あ、あの! 他の星についても聞きたいんですけど……いいですか?」
そんな中で話を変えようとしてくれる悟飯さん。
あなたは天使だ。
なんなの? ドラゴンボールって親世代ひどいよね。悟飯さんいい子……。
悟飯さんの純粋な話ならウェルカムおっけーだよ! 喜んで話すさ!
「お前ら、のんきだなー」
にこにこと悟飯さんと話していたら、ずいぶんと大きい独り言が聞こえてきた。
構わずいろいろな星について会話しながら飛んでいると、〈西の都〉が見えてくる。
あれ? こんなんなの?
未来では荒廃しているのでそもそも建物が少ない。
けれど、目の前にある都は、ビルや丸い球体が建っている近未来的な都市だった。
きょろきょろしながらCCに着くと、ブルマさんの両親を紹介された。
漫画どおりの白髪の眼鏡をかけた髭おじ様と、金髪の女性がニコニコとそろってお昼を食べていたのだ。お邪魔して申し訳ない。
「ブルマさん、あの、これ壊れてしまっているようで、直してもらいたいんですけど」
そう言ってブルマさんに渡したのはドラゴンレーダーだ。
「あら、年季入ってるわね」
「部品が無いみたいで直せないらしいんです。未来に帰ったら使うことになるので、それまでに直して欲しいんですけどできますか?」
「簡単よ。と、言いたいところだけど、中開けてみないとわかんないわ。できたらアンタかトランクスに渡せばいいんでしょ?」
「はい。お願いします!」
ぺこりとお辞儀するとブルマさんのお母さん、パンチーさんが声をかけてきた。
「あらあら、立ち話しないでランチでもいかが?」
「えっと……」
さ、誘われてしまった。
返答に困って悟飯さんを見ると、首を横に振って断っている。
「お父さんに知らせなくちゃいけないのでボクは遠慮します。サーヤさんはどうしますか?」
「あ、わ私も、悟空さんに用がありますので……また機会があれば」
「すみません」と謝って、挨拶もそこそこに私たちは飛んだ。
いつの間にかいなくなっていたヤジロベーさんは、飛行機でさっさと帰ったようだ。さっき飛んでいった飛行機の中に気配を感じたので、たぶんそう。
悟飯さんの家に向かう事になったが、聞けば結構山奥にあるらしい。
「じゃあ行きましょう。こっちの方角です」
「はい!」
「かなり遠いですけど、大丈夫ですか?」
「がんばります!」と気合を入れて飛び立つ。
並んで飛ぶことになったが、悟飯さんは前に出たりしない。
私に合わせて飛んでくれているんだ。
なんていい子なんだ……! トランクスさん並みに速く飛べるというのに!
「あの、さっきの話の事なんですけど……家につくまでの間、続きを聞きたいんですけどいいですか?」
「えっとどこまで話しましたっけ」
「温泉の話です。棚状に変化した地面にお湯があるんですよね?」
「ああ、そうです。段々になっていて……」
悟飯さんは結構細かいところまで聞いてくる。
確か学者志望だったっけか。
そのほかにも仙豆のようなソタ豆のある星についても話すと、悟飯さんはキラキラ目を輝かせた。
「いいなあ。見てみたいな」
「そんなに気になるんですか?」
「う、はい。ボクそういう話しが好きで……楽しいです。サーヤさんはすごいですね。いろんなことを知ってる」
「そんな事ないですよ。ただ旅をしてきただけだからその分知ってるだけです。地球のことはわからないですし」
「ああ、〈西の都〉みて驚いてましたね」
「ええ。だって全部丸いんですもん」
言葉に出すと悟飯さんは声を出して「あはは」と笑った。
考えてみれば、私ドラゴンボールの世界の地球の事をよく知らないな。
前世の地球とはまるで違うもんなあ……。
寂しさに似た感情が胸をよぎり、私は一瞬故郷を思い出した。
「どうしました? サーヤ、さん?」
はっと息をのんで、慌てて「なんでもないです!」と取り繕う。
「あの、よければ悟飯さん、私に地球のことを教えてくれませんか?」
「え!」
「未来は話したとおりなにもないですから。簡単にでいいです。平和になった時のことを考えて、予習しておきたいんです。両親を生き返らせたらそのまま地球に住むことになるだろうし……」
帰ったらすぐにでもナメック星に飛んで、みんな生き返らせるつもりだ。
ということは、今のこの地球で生活に慣れておいたほうが色々と都合がいい。
何せ地図もよくわかんないからな……。
「予習」と悟飯さんはつぶやいた。顔はきょとんとしている。
その顔を見て思い至る。
安易に口にしてしまったが……駄目じゃないか?
お前なにしにきたんだよって思われたんじゃない?
「あっ! 駄目ならいいです! 人造人間を倒す事が先ですよね! すみません!」
「ち、違います! ダメじゃないです!」
え、いいの? 本当に?
悟飯さんはちょっと照れたような笑いを浮かべて言った。
「ボクが知ってることであれば教えます。いろんな星の話はおもしろかったし」
「まだありますから、いくらでもお話ししますよ」
「やった!」と喜ぶ様子は子供らしくて大変かわいらしい。
でもそんなはつらつとした笑みは、すぐにしぼんでしまう。
「……あ、でも、いいのかな。お父さんが寝込んでいる時に……」
「そ、それを言われると……少しならいいんじゃないでしょうか」
ものすごくしょげた表情をして落ち込んでいるようだったので、悪い気がしてしまった。
悟飯さんの言うとおりだとは思うんだけど!
悟空さんは薬効けばすぐ健康になったはずだし!!
あーだめだー。素直な悟飯さんと話してると、願望が抑えきれない自分の愚かさが際立つ……。
「そうかな……。あ、あと少しです。あの山が目印なんですよ」
悟飯さんは前方の山を見た。
私も進行方向へ顔を向けたが……。
目印、というだけあって確かに特徴的な山ではあった。
大きな岩が山のてっぺんに鎮座している。
一応、ぐるっとあたりを見渡したが他にそんな山はない。
「修行で……北のほうから持ってきたんです。ピッコロさんと一緒に」
いや、そんなはにかむような笑みを見せられても。
大きすぎないかな? あの岩。
近くを通り過ぎる時に大きさを実感した。
いくら修行で岩を動かしたって言ってもほどがある。
CC並みの大きさの岩……怖いわ。
「へ、へぇー、すごいですね。さすが、力もちなんですね」
かわいいけど、やっぱりサイヤ人だわ。
そりゃあそうだよね。世界最強だもん。こんな岩余裕さ。
この未来は安泰でいいなあー。
「あの家がボクの家です。丸いやつ」
「へー。かわいいおうちですね」
相槌を打ちながら気づいたことがある。
トランクスさんとクリリンさんの気配があるのだ。他には……ピッコロさんは上空だし、天津飯さんははるか遠くにいる。
これはどうなったんだ?
いや、まず悟空さんを確かめてから、トランクスさんにどうなったのか聞いたほうがいいのかな。
小さく見えていた家が大きくなるに連れて悟飯さんが驚きの声を上げる。
手を振っている人もいる。
女の人――チチさんだ!
髪型お団子だもん! 絶対そう!
でもなんだか……顔が恐いぞ? なぜ怒っているんだろう?
降り立つと女性特有の高い声で怒鳴られた。
「悟飯ちゃん! 何考えてるんだ!? お父さんが寝込んでる時にデートなんて!」
「へ? デート?」
「ぃえっ!? 違うよおかあさん!」
考えたことも無かった指摘に目をまん丸にしていると、チチさんは飛び上がって怒った。
「なにが違うんだっ! 並んで仲よさそうに!」
「チチさん! そんな事言ってる場合じゃないって! お前らとにかく飛行機に乗ってくれ! 行きながら話す!」
クリリンさんがチチさんを羽交い絞めにしながら「早く!」と急かす。
言われるがままに飛行船に乗り込むと、トランクスさんもそこにいた。
「あれ? 来たんですか?」
な、なにその不思議そうな顔!?
来たよ! 悟空さんのそばにいたほうがいいと思って!
「てっきり母さんのところで待ってるんだと思ってました」
そんなトランクスさんの言葉に続いて、クリリンさんたちの言い合いが大音量で後方から聞こえてくる。
振り向けばクリリンさんと悟飯さんが、今にも飛びかかってきそうなチチさんを抑えつつ、乗り込んできた。
「そんな破廉恥な子供に育てた覚えはねーだぞ!」
「ああもう! 落ち着いて!」
「ヤムチャさん! 飛んでくださいー!」
「そもそもおめぇどこの誰だ! うちの悟飯ちゃん誑かしてっ!!」
赤鬼のような顔に変貌しているチチさんにびしっと指を突きつけられ、私はぱっかーんと口を開けた。
たぶらかして?
たぶらかすってどういう意味だっけ?
「うわあ! サーヤさんあきれてるから! 恥ずかしいからもうやめてー!」
「サーヤってのか!? おめえな! まず最初に挨拶すんのが礼儀だべ! それをこそこそと!!」
「チチさん! 落ち着いて! 静かにしよう!? 悟空寝てるし!」
チチさんにすがりつくように悟飯さんが足に引っ付き、クリリンさんは静めようとしているが、どちらも効果はない。
最初に挨拶をって言われたけど、挨拶する前に怒られたんだけど。
こういう理不尽さってよくあるよね。
「おおい、飛ぶからなー」
しみじみと思っていると、男の人の声が聞こえて飛行機は離陸した。
+ + + + + + + + + + +
腕を組んだクリリンさんがむっすーと機嫌悪そうに座っている。
頭には赤く引っかき傷がついていて、痛そうだ。
つけたのはもちろんチチさんである。
「だから誤解だって言ったじゃない……お母さんはせっかちなんだから」
悟飯さんが気まずそうにうつむいた。
「だって……驚えたんだ。いままで女の子なんて……友達もいなかったのに」
チチさんはむっとしながら、でも居心地が悪そうにマットに腰掛けている。
クリリンさんは「ともかく! 肝心要の話をするぞ」と今までの経緯を話し始めた。
いやー。チチさんはすさまじかったな。
美人が怒ると恐いのはわかるんだけど、まさに般若。
でも悟飯さんまだ10歳くらいだよ? そこまで怒らなくてもいいんじゃないか?
ちょっと一人息子愛しすぎでは。
これは嫁にくるビーデルさんは大変……いや、むしろビーデルさんじゃないとダメなんだろう。金持ちだし。
あの後ちゃんと挨拶はしたし謝った。
誤解させてすいませんって。
許してくれたかどうかは微妙だが誤解は解けた、と思う。
私たちは今、悟空さんを囲むように座り情報の共有をしている。
人造人間は起動し、超サイヤ人になったベジータさんでも敵わず、16号17号18号が悟空さんを殺しに来るらしい。
ふむふむ。本の通りだと思う。
ならそろそろセルが動くはずで、ピッコロさんが神と融合するのももうすぐだ。
そのあとピッコロさんとセルが戦うけど、肝心の悟空さんが起きるタイミングを覚えてない。
そこらへんサラッと読んだからあんまり記憶に残ってないんだよなあ……。
そんな物語の主人公さんは目の前で寝ている。
この人ほんとに独特な髪型してるな……。
顔は目が閉じてるからなんとも表現できない。
普通の顔? イケメンとはいいがたい、フツーのアジア人だ。
あっ、そんなことを言うとファンに刺されそう。
……早く起きてくれないかな。歴史が変わらない範囲で早めに目覚めてほしい。
そして私をナメック星に連れてってくれ。
悟空さんを眺めていたら、とんとんと肩を叩かれた。
叩かれた左肩を見ると「聞いてますか」ってトランクスさんに睨まれる。
「……悟空さんを殺しに来るんですよね?」
「そんなに強いんですか?」
「ああ、トランクスの倍以上だと思っていい」
私の左側にはトランクスさん、その隣は悟飯さん。
奥には悟空さんの寝ているマットに腰掛けているチチさんがいる。
私の右側は操縦席になっており、操縦しているのはヤムチャさんだ。
そしてクリリンさんは悟空さんを挟んだ向こう側に座っている。
「ど、どうすんだよ」
どもりながら話すのはヤムチャさんだ。
顔の傷跡がワイルドさを醸し出しているイケメン。ブルマさんが靡くのも無理はない、かな。
でも正直、初期のころのヤムチャさんが一番かっこいいと思う。
すきなんだよね。女の子が苦手だったヤムチャさん……。
今はチャラ男なんだよね?
……あのころのヤムチャさんに戻って欲しい。髪型だけでもいいから戻ってくれないかな。
「俺に言われても……どうしたらいいんでしょう」
困った顔をしているクリリンさんはよく見るとかわいい。
遠目から見るとハゲのおっさん。でも面倒見もよくていい人だというのは折り紙付きだと思う。
現実だとすーぐ結婚しそうな高コミュ能力持ってるけど、やっぱ欠点はあれかな。
金。……18号と早く幸せになって欲しい。
「こういうのはどうでしょうか。俺が……タイムマシンでもっと昔へ行って動き出す前に壊してしまうんです」
「……は?」
考え事してたらトランクスさんが妙な事言い出した。
思わず出た声は思っていた以上に機内に響き、慌てて「いや、何でもないです」と取り繕う。
不審そうな顔をされたけれども、俯いて黙殺した。
話に入るつもりは私にはない。
「い、いいんじゃないか?」
よくないですヤムチャさん。
しかし、私が説明することはできない。
黙っていたら、クリリンさんが異を唱えた。
「タイムマシンてのは完璧じゃないんじゃなかったのか? ……それに、悟空が言ってたけど往復分のエネルギーを作るのだってやたら大変なんだろ?」
そうそう。
話がどんどん進む中、私は俯きながら心の中でうんうんと深く頷いていた。
「――いまいる人造人間はどうなるんでしょうか……ふっと消えちゃうんですか?」
「あ! そうか、忘れていた!」
本当に忘れていたようでトランクスさんは驚いたような声を出していた。
……トランクスさんってちょっと抜けてる時がある。
そもそもまた過去に飛んだら帰れなくなるし、この世界の人造人間だっていなくなったりしない。
意味がない。
「――つまり、助かった悟空さんがいる未来もあれば、死んでしまった未来もあるんです。ちょっとしたことでたくさんの未来ができてしまうわけです」
トランクスさんがそう説明すると、クリリンさんが人差し指で天を指しながら問う。
「ちょっと待てよ。じゃあえーと、これから悟空が人造人間をやっつけたとしても、お前らの未来じゃそのまんま人造人間は存在してるってことになるんじゃねえのか?」
「……そうです」
「だったらお前らはいったいなんのために来たんだよ。お前らの世界は変わらねえんだぞ」
「それは……」
ヤムチャさんの質問に詰まったトランクスさんは、明らかに私を見た。
……見ないでほしい。
私あんまり話したくないんだよ。元々ここにいないからさ。
「母さんが……人造人間にやられっぱなしじゃシャクだから、奴らをやっつけてしまった平和な未来があってもいいんじゃないかって……でも一番の目的は悟空さんと人造人間の戦いから弱点を見つけることだったんです。それが無理なら悟空さんにタイムマシンで俺たちの未来に来てもらってやっつけてもらうとか……」
「えっ」
悟空さんに来てもらう?
目を合わせたトランクスさんはあれ?って顔をしている。
「言ってませんでしたっけ」
私はふるふると横に首を振った。
聞いてない!
そういう話は時前に共有しとかないと変じゃん!
ほら! クリリンさんが怪しんでそうな顔してる!
そもそもあんな狭い宇宙船に悟空さんも入れたら……圧死するよ。自信ある。
いくらファンでも野郎二人とすし詰めにされるなんて真っ平ごめんだ。
「あっ、でもこの子が来たので! ナメック星に行けるようになればドラゴンボールが使えると教えて貰いましたから、今のところ一番の目的はそれです。悟空さんが目覚めたら頼んでみないと」
クリリンさんは口元に指を当てて少し沈黙した後、私たちを見た。
「おまえらってさ、一緒に未来から来たくせにいまいちかみ合ってないよな。トランクスはサーヤちゃん置いて行くし、今だって俯いて黙ってただろ? 仲、悪いの?」
「そんなことはないです普通です」と即答すると、「そう、そうですよ」とトランクスさんが追従する。
「……そうかァ?」と言うクリリンさんは訝しげに片眉を下げた。
そこに悟飯さんが首を出して話しかけてくる。
「あの、瞬間移動ってそんなに離れたところにもいけるんですか?」
「あ、はい。私はそうですね……ヤードラットまでなら一度に飛べますよ」
「お父さんが瞬間移動を覚えた星ですか!? すごい!」
「いや、すげえのかよくわかんねーよ」
悟飯さんは素直に驚いてくれたけれど、ヤムチャさんには突っ込まれた。
「でもさ、トランクス。お前の知らない人造人間が多かったって言ってただろ? しかも手が出ないくらい強いし、悟空が病気になる時期も違うって言ってよな? ってことはお前の知ってる未来と全然違うってこった……なんでそんなに変わっちまったんだ?」
腕を組んだクリリンさんは少しばかり頭を傾ける。
「……たぶん俺が前に一度来てしまった影響で変わってしまったんだと思います。でも人造人間があんなに強くなってしまうだなんて……すみません……」
トランクスさんが横目で私を見てくる。
大丈夫だよ。たぶん外れてない!
そんな思いをこめて視線を送る。するとチチさんの笑いを含んだ声がかけられた。
「気にする事なんかねえだよ」
チチさんが悟空さんを見て微笑んだ。
「おめえが来なかったら悟空さ病気で死んでたんだもんな! おらすっげえ感謝してるだよ!」
トランクスさんに向かってうれしそうに話す。
何気ない一言だった。
でもそれに伴う顔を見たら、唐突にずきんと心臓が痛くなった。
悟空さんは病気が治ってもいずれ死んでしまう。
それは当たり前の流れで、外れると困ったことになる。
でも……この人にとって見たら関係ないよな……。夫――家族が死ぬ以上に悲しいことなんかないよなあ。
「あ……」
トランクスさんは俯いてしまった。
悟空さんが死ぬと教えていたからだろうか。表情は悲しそうだ。
私はそれを隠すように微笑んでチチさんと向き合った。
「そうですね。死んでしまうと私が来た意味がなくなってしまいますからね。早く目覚めて、ナメック星に連れて行ってほしいです」
軽口をたたいたつもりだった。
しかし、奥さんには通じなかったらしい。
「……なんだかむかッとするだな……」
「え? なぜそんな怖い顔に?」
「お母さん!」
「嫉妬深いなー」
また般若が降臨しそうになり、悟飯さんがチチさんにすがりつく。
そのドサクサに紛れ、私は俯いているトランクスさんを肘で小突いた。
小さく頭を振ると、それに気づいたトランクスさんは小さく口を動かして悟空さんを見た。
そんな中クリリンさんが自分の頭をなでながら言った。
「悟空が起きれば変わるだろうさ。お前らの知ってる未来では悟空はいないんだから」
「そうだな。なんとかなるさ。悟空が起きればな」
「はは」
ヤムチャさんとクリリンさんが笑い合い、それに相槌を打ちながら窓を見た。
まだ、目的地には遠そうだった。
