107.試練

第二部 人造人間編

第五章 長い冬

107 試練

 試した。
 そう最長老は言った。
 つまり今までのこと全部、クリリンさんが言っていた試練というやつだったらしい。

「ベジータは確かに我らの同胞を殺しました。しかし、それは昔のこと。許すつもりはありませんが咎めるつもりもありません。ですが、その血を引くとなると話は別です。我々は貴方たちのことを知らない。ですから――騙すような真似をして申し訳ない」

 最長老は私を見て、しゅんと瞼を伏せた。

「私が提案したのだ。最近ほかの星からの渡航が増えて、小賢しいやつらが〈願い玉〉を狙うことが多くなったのでな。……手紙もやつらがよく使う手だった」

 手紙を握りつぶした長老に事の経緯を話されても私は口を開かなかった。
 開いたら言いたくない事まで言ってしまいそうだったからだ。

「……こうやって話していただけるということは、合格したということでしょうか」

 傍らのトランクスさんはもう地面に頭をつけていなかった。
 その言葉に最長老は肯く。
 長老が続けた。

「無論だ。……ベジータと同じようであれば決して渡しはせんが、お前は外見だけで中身も父親にそっくりなわけではないようだ。あいつは死んでも謝罪すらしない」

 吐き捨てるように長老が言うと、トランクスさんが「すみません」と頭を下げた。
 それに長老たちが口角を上げる。

「幾分突拍子もないことで驚きましたが、皆あなた方を認めたようです。……サーヤ殿、でしたかな」

 名前を呼ばれて私はゆっくりと視線を最長老の目に合わせた。

「手紙には貴方の力になるようにと書かれていました。我等は願いを叶えましょう」

 ――書かれてるなら最初から試すなよ。

 そう思ったものの、口にすることなく頷いた。

 最長老は「〈願い玉〉をここに」とナメック星人たちに向かって声高々に命じた。
 その言葉にほっとしたような気分になる。
 少しだけ、苛立ちが収まった。

「申し訳ないが少し時間をくれ。分散させて置いているのでな」

 長老はそういって数人引き連れて飛んでいってしまった。

「……集まるまで休んでいてくだされ。今敷物を用意させましょう」

 最長老の言葉にトランクスさんが遠慮を申し出るが、最長老はにっこり笑って取り合わずになにやら周囲に指示し始めた。

 それを境に周りを取り囲んでいたナメック星人が散りじりになっていく。
 しかし数人だけ寄ってきた。

 そのうちの一人は足早に私たちの前に駆けつけると膝を折って頭を下げた。
 デンデさんだった。

「ごめんなさい。何度もやめるように言ったんですが、止められなくて……」

 デンデさんが言うにはナメック星人たちは私たち二人の様子を見て、皆で念話テレパシー会議していたらしい。
 ガッデム。

「ケガは……ないみたいだな」
「振りだったんだ。本当に殺すつもりは無かった」
「く、苦しかったか? 水、飲むか?」

 ピッコロさん(仮)や、私を拘束していた人達がしゃがみこんで申し訳なさそうに様子を伺ってくる。
 でもやっぱり私は答えない。

「サーヤ、ナメック星人たちも悪気があったわけじゃないから。ドラゴンボールも貸してもらえるようだし……あの、そろそろ泣き止んで……」

 傍らのトランクスさんがそっと覗き込んでくる。
 困ったような顔をした額に、土がついていた。
 茶色い土が、さっきの光景を思い出させて頭の裏側がかっと熱くなる。

「泣いてません。……わかってます。だいじょうぶです」

 私は泣いていない。
 どちらかというと叫びたくて仕方ないから堪えているのだ。

「……サーヤ」

 トランクスさんとデンデさんたちはそれっきり口を噤んだ。

 ナメック星人の言い分も理解しているし、むしろ認めてもらえてありがたいと思っている。

 そう。私が苛立っているのはナメック星人にではない。

 自分自身にだ。

 なんのための知識だったんだろうかと、腹が立って情けなくて悔しい。

 自分を自分で貶め、嘆き、苦しみ、それらをすべて叫んで出したい。
 でもここはナメック星だ。
 そんなことできないからひたすら耐えていた。

 しばらく黙って俯いていたら、〈お守り〉に良く似た柄の布をたくさん担いだナメック星人が周りに敷き始めた。
 石でできているようなちゃぶ台を置いたり、瓶を運んだり。

 ピクニックでもするのか?

 私はじっと見ていただけだったが、鬱々とした思考はたやすくそれに持っていかれる。

 だって明らかなおもてなしだったのだ。
 濃い色合いの布が地面に広げられ真ん中にちゃぶ台、その周りには座布団のようなクッションのような三角のもの。
 それに向かって「どうぞ」と手を向けられたら驚くしかないだろ。

「まだ時間がかかるからここで休めばいい」といって日よけを張り始めるノッポのナメック星人や、「トランプやる?」と小さい子供が数人遊びに来たり。
 遠慮すれば悲しそうな顔をされるし……当初と全く態度が違うではないか。

「……サーヤ、模型を出したらどうですか。もう出さなくてもいいかもしれませんけど、……せっかくだから」

 手持無沙汰気味に三角のクッションを触っていたトランクスさんはそう言った。

 ……まあ確かに。
 数人のナメック星人とちゃぶ台を囲んでいるのだが沈黙が続いている。
 さながら通夜のような雰囲気だ。

「……〈かばん〉、開けてもいいですか?」

 私は鼻声になりながら近くにいたナメック星人に声をかけた。

「いっいい! 好きにしたらいい!!」

 ブンブンと勢いよく頷くナメック星人を見た後、私は〈かばん〉を開けた。

+ + + + + + + + + + + 

「すみませんな。ナメック星ここには地球のように多彩な飲料はありませんので」

 最長老がそういって手渡してきたのは水が入った細長い器だった。
「地球人が飲んでも害はありません」と微笑む最長老の顔を立てて、少し口をつける。

 それは熱すぎない程度に温かい、白湯だった。

「驚かれましたかな? ナメック星では火を使いませんが光を集めて熱源にする術は持っているのですよ。水はそれを使って温めたものです。……地球の方々は時折そうやって飲まれるでしょう」

 最長老は「昔、お世話になったとき亀仙人さんが飲まれていたんですよ」とにっこり笑った。

 よく見れば私とトランクスさんの器からは湯気が出ているが、ナメック星人たちの器からは出ていない。
 わざわざ用意してくれたらしい。

 礼をいうと、最長老は頭を振った。
 感謝しなければならないのはこちらのほうだと。

「ブルマさんとご家族には大変世話になりましてな。感謝してもし尽くせません。……はは、そのクッションも元はブルマさんのところから頂いたものだったのですよ」

 最長老はいまだクッションを触っているトランクスさんに向かってにこにこと笑う。
 確かにクッションは地球のものとよく似ていて、手触りがいい。
 それを指摘されたトランクスさんは無意識だったようで、まじまじと見ていた。

「いやしかし……本当によかった」

 最長老の視線の先には、私が〈かばん〉から出したCCの模型が置かれていた。

 模型を置いたとき、それを見て目をまん丸に開いたナメック星人たちは皆で同じ方向に走り出し、少し経ってから大事そうになにかの包みを持ってきた。
 そして丁寧に包みを開けると模型の隣に同じものを並べる。
 すると周囲にいたすべてのナメック星人は歓声を上げた。

「サリガの像にそっくりだ!」
「いや、そのものだ!」
「そうだな! まじないが……どちらの像も効いている!」
「本当に、ブルマさんの子供だったんだ!」

 CCの模型を見て、その次にトランクスさんを見て頷いたのだ。
 何十人ものナメック星人がいっせいにトランクスさんを見て涙ぐんだものだから、トランクスさんは記憶にないぐらいたじたじになっていた。

「あの像は届くことがないと思っていました。作り出したのはサリガでしたが……出来上がってから想いだけでも届かないものかとデンデが祈りを込めるようになったのです。それがいつの間にか皆やるようになりましてな。いや、渡すことができてなによりです」

 そういうな否や最長老はトランクスさんに向かって深々と頭を下げた。

「騙すような真似をしてしまい、ほんとうに申し訳なかった」
「いえ! 気にしていませんから! 頭を上げてください!」
「……信じられなかったとはいえ、恩人の子孫を地に伏させるなどと、愚かな行為でありました……許して、くださいますかな」

 最後はトランクスさんではなく、私に向かって言った。
 ……なんでだ。

 許すもなにも、こっちがいきなり押しかけてきたのであって、あなた方は別に悪くないのでは。
 ちょっと態度があれだったが、警戒してのことだと思えば当たり前だと納得できるし。
 ベジータさんに仲間を殺されたのに、その息子がドラゴンボール貸してって言ってきたらそりゃああなるのはしょうがない。

 そう伝えると、最長老はさらに深く頭を下げた。
 どうやらちゃんと「許す」と言わないと駄目だったらしい。

 もういいよ土下座は!

 トランクスさんと二人で許してますからと強めに言うと、最長老はゆっくりと顔を上げてにっこりと笑った。

「よかった。……ああ、冷めてしまいましたね。温め直しましょう」

 もっていかれる器を見ながら、私は息を吐く。

 ……なんか、毒気を抜かれたなあ……。

 + + + + + + + + + + + 

 時間がかかると言った長老の言葉通り、すべてのドラゴンボールが集まるのはかなり時間がかかった。
 それでも今、目の前にドンと置かれているのは望んでいたもの。
 じんわりと明るい光を放っている玉。ドラゴンボールだ。
 本物だ。
 ようやく本物に出会えた。

 実際見れば感動で泣くかなと思ったが、違った。
 頭の中でくるくると再生されるのは家族のことだった。
 当然、私の視界はぼやけた。

「■■■■■■■■!」

 デンデさんの言葉に七つ集まった大玉のドラゴンボールは白く発光した。
 そして光は天へと登る。

 そのまま天を貫くかと思ったその光は、ひときわ大きくなって形作る。

「これが、ナメック星の……」
「ええ、ポルンガです」

 呆然とした風につぶやくトランクスさんの声に、デンデさんのうれしそうな声が続く。

『さあ、願い事を言え』

 頭に直接響いてくるような重厚な声、緑色の龍を思わせる巨体。
 そのどれもが想像よりも遥か上をいっていた。

 でかい。

 でかすぎて手前の尻尾は見えるけど、顔が遠すぎてぼやけてしまう。
 目が悪いってこういう時損だ。
 感動が半減した。

「ええと、地球を20年前の状態に戻すことはできますか!」

 予め相談していたことをデンデさんがポルンガに向って言う。
 すると、『難しい』と返された。

 建物のような無機物は簡単らしい。魂がある生き物は転生しているものもいるからできない。
 つまりそういうことらしい。

「ならばわけて願いなさい。人は意志がある分制約も多いようですからな」

 最長老のおっしゃるとおりに、一つ目は人造人間によって破壊された所を直してもらうことにした。
 これは容易く叶えられたようだ。

 それよりも肝心の人間である。
 ポルンガを呼び出す際最長老に確認していたけど、どうやら最長老はフリーザ戦から今日に至るまでドラゴンボールを強化していたらしい。
「昔は無理でしたが今は複数人同時に生き返らせれるようになりましたぞ!」って意気揚々と言われたんだけど、こっちは最初からできると思って来てたからちょっとヒヤッとしたよね。
 まあできるなら問題はなにもない。
 だからお願いした。

 人造人間やセルに殺された人々を極悪人以外生き返らせてくださいって。

『20年分はできない』

 うん。そうかなとは思ったんだ。
 世の中そんなに甘くない。私もそこまで簡単にうまくいくとは思ってない。

「なら10年分は?」

 軽く聞くと、ポルンガは少し黙って『5年分なら』とおっしゃった。

「たかだか倍になるだけじゃないですか。お願いします。10年」
『天界が混乱する。5年だ』
「地球人は20年前に大半死んでるんですよ。10年でも少ないと思います。10年」
『……6年』
「9年」
『7年。これ以上は難しい』
「全員じゃなくてもいいんです。本当は全員がいいけどできる限り生き返らせてほしいんです」
『しつこいな。ちょっと待て……』

 何回かやり取りすると、またポルンガが考え込むように黙り込んだ。
 後ろの最長老は呆然とし、周りのナメック星人も目を瞬いてこちらを見ている。

 いやだってさ。ポルンガ20年はできないって断言したけど、10年は即答しなかった。
 って事はやればできるんだよ。

 なら5年も10年もさほど変わんないじゃん。
 せっかくならできるだけ多くの人類勝ち取りたいって思うじゃないですか。
 死んだ人全員生き返らせてほしいっていうのは妥協したんだからそちらも歩み寄ってほしいな。

 たしか地球の神龍よりサービス精神あるよね?
 オッケーってフランクに言ってるところの印象が強くてよく覚えてるよ。

 だから多少の無茶振り許されるかなって思ったんだ。
 試練のときの失敗を取り繕いたかったっていうのもある。
 まあ、でかすぎて尻尾しか見えなかったのも、言いたいことがいえた要因だな。

『……今回だけ、特別だ。10年分やってやろう。願え』

 待ちくたびれるくらい経ってから、ポルンガは渋々という感じで口を開いた。

「さすっが! 頼れる太っ腹な神様です! デンデさん!」

 近くにいたデンデさんに願い事を言ってもらうように促すと、「はあ」とまだ目を白黒させながらナメック語を言い放った。
 直後、ポルンガは厳かに言った。

『……時間がかかる。待つがいい』

 それっきり、黙り込んでしまった。

 いやあ、交渉がうまくいくと気分がいいですね!
 この姿をラクに見せてやりたいよ!

「くっ、は、ははっ!」

 やり遂げた感でちょっとすっきりした気持ちになっていると、いきなり長老が笑い出した。

「なんと罰当たりな人間なのだ! はっははは!」

 そういって口を大きく開けて笑った。
 その姿は会った当初の険悪な表情なぞ皆無だった。

「ポルンガも少々困っとるような口ぶりでしたな。しかし、叶えることができるようでよかった」

 最長老も困ったように笑っている。

「……どういうことですか?」

 トランクスさんは神妙そうに視線を向けてくる。

 いや、よくわかんないですけど……。ナメック星人の反応のほうが私にとって疑問ですよ。

「貴方のようにポルンガに強く申し出ることはありませんから皆驚いているんですよ。それにポルンガも10年でも構わないと言ったのはきっとナメック星の年で願われると思ったからじゃないでしょうか。でもサーヤさんは地球の10年と願ったでしょ? 地球の1年はナメック星の3倍ですから」
「そうなんですか」

 トランクスさんがデンデさんに説明されて「へえー」と頷いている。
 私はふーんとポルンガを見上げた。

 いきなり態度が軟化したのはそのせいだったのか。

 残念だったね。
 私が漫画のシーンで好きだったのはナメック星人が地球に来たところだったのだよ。
 詳しく言えばブルマさんが「あたしが魅力的でも手出しちゃ駄目よー」ってベジータさんに言って、「下品な女だ」って返してるシーン。

 ものすごく好きだったんだ。

 その次でポルンガ呼び出してブルマさんがウインクしてるところだってとっても好きだったから何度も読み返したもんだ。
 だからさ、覚えてるんだ。
 130日で呼び出せるって。その130日がナメック星で言う一年だって。

 好きなシーンは良く覚えてるっていうね。当たり前だね。
 だから間違えないようにと、わざわざ『地球での10年で』とデンデさんに言ってもらえるようお願いしたんだ。

 ちょっとは挽回できたかな?
 そう考えるとちょっとだけ気分が盛り上がった。

 しかし後に引けなくなったからだろうか。
 ポルンガは、二つ目の願いをなかなか叶えられなかった。
 とっっっても時間がかかったのだ。
 なのでポルンガを待つ間、次の願い事を相談することにした。

 このままだと人造人間が現れた当初に死んだベジータさんたちが生き返らないからだ。
 トランクスさんと最長老、デンデさんたちとああでもないこうでもないと言い合って、最終的に決まったのは、

「人造人間と戦った勇敢な戦士を生き返らせてほしい」

 こんな感じ。

 2つ目の願いを叶えてちょっと声音が疲れたように聞こえるポルンガにダメ元でお願いすると、それはすぐに叶った。
 あんまりにも早かったので、もしかしたら皆生き返ってないかもしれない。
 帰りに確認しなければ、と思っているとポルンガの声が頭に響いた。

『願いは叶えた』

 消えていったポルンガは最後ちょっと息切れしていた。
 悪いが次もお願いしに来るから。そのときもよろしく。
 心の中で拝んでおいた。

「大丈夫だと思いますが、万一クリリンさんたちが生き返っていなければまたお貸しいたしましょう。気をつけて」

 帰ろうと挨拶すると、最長老は握手を求めてきた。
 それに答えていると、ピッコロさん(仮)が大きな包みを持って走ってくる。

「おい! 忘れずに持って行け! ……お前のだろう!」

 ぐいっと押し付けられたそれをトランクスさんがお礼を言って受け取っていた。

 大きいから二つとも〈かばん〉にしまっていると、ナメック星人が各々声をかけていく。

「ブルマさんによろしく」
「次来るならぜひ一緒に連れてきてくれ」
「ブリーフさんとパンチーさんもな」
「ああ、会いたいからな!」

 トランクスさんは囲まれて大変そうだ。
 声をかけ終わったナメック星人はそのまま片付け始める。

 私自身が障害物になりそうだったので、ちょっと離れていようと後ろに踏み出せばすかさず声をかけられた。
 最初に突っかかってきた長老だった。

「大事にするといい。子々孫々まで加護がつくだろう。幸せにな」
「はあ」

 なんで私。トランクスさんに直接言ってくれ。

 不思議に思っていると一人のナメック星人がもじもじと話しかけてくる。

「もう、機嫌は治ったか」

 驚いて眉なしの顔を凝視すると、その人は申し訳なさそうに視線を地面に向けた。

「すまなかった。皆で決めたこととはいえ羽交い絞めなんかにして……俺は決して引き裂こうと思ったわけではない」
「はい?」
「感動したんだ。末永く幸せになってほしい」
「はあ?」

 なんかいまいち言ってることが理解できないな。
 なにに感動したって?

 心底疑問に思ったが、その人は他になにも言わず片付けに行ってしまった。

 残るのははっきりしないモヤモヤ感である。

 しかし深く考える暇も無いまま、別のナメック星人に「お幸せに」とか「仲良くな」とか声をかけられる。
 皆大体同じ事を言っていくのが不気味だ。

 これはもしかして。
 皆、勘違いしているのではなかろうか。

 青くなりそうな行き着いた考えを誰かに聞いて確かめる前にトランクスさんが戻ってきた。

「サーヤ! 帰りましょう!」

 早く家に帰りたい子供みたいな表情だった。

 ――まあ、いっか。

 帰るという多大な期待の前には、その他のことはめんどくさいことに変わる。

 とりあえず次も来るだろうし、そのときはっきりさせよう。

 伸ばされた大きな手のひらに、私は自らの手を乗せた。
 来た時と同じように握り締められ、私は目を瞑った。


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