25.満月

第一部 旅編

第三章 決意

25 満月

 エコナ星で迎えた夜。
 空を見上げれば天の三分の一ほども占める大きな月が横から顔を出していた。
 真夜中になれば月が天を覆うのかな? 寝てるから確認できないだろうけど。

 月が大きいからか、夜なのにぼんやり明るい。草や木、葉っぱすらもよく見えた。

 ――月は、見ているとなんだか落ち着かない。

 サイヤ人は月を見ると大猿に変わる。
 そのためには尻尾が必要なわけだけど……私たちには尻尾はない。あるのは首に生えた羽だけ。
 月を見ても大猿に変わる心配はない。
 それでも心がざわめくのはサイヤ人から受け継がれた習性なのか、はたまたこの月が大きすぎるだけなのか。

 なんとも落ち着かなくて、私たちは早々に寝てしまおうと布団を引っ張り出した。
 眠る前に歯を磨く。いつもの習慣でいつもと変わりがない日常の一コマだった。
 トーガはシロを撫で回し、私は洗濯物を畳んでいた。

 三人の中で磨くのに一番時間をかけるチルが億劫おっくうがって窓から外に出る。
 いつもであれば宇宙船の中でバケツに向かって口をゆすぐが、星に下りた場合は外にそれらのものを置いている。
 その理由は簡単で、汚れても外だったら掃除をしなくていいからだ。
 だからチルは外に行った。

 そのとき、それは起こった。

 ……いいん、りいいいん、りいいいん。

 なんだろう。
 虫の音? まるで鈴虫みたいな――と、思っていた矢先にチルの気配がふっと消えた。

「!?」

 立ち上がり、窓から外を見ようと足を踏み出したそのとき、窓枠から白い手がにゅっと伸びた。

「こんばんは」

 するりと窓から入ってきたのは、少女だった。
 少女は窓枠に腰かけるとくすくすと笑い始めた。
 それがとても不気味で、私は後ずさった。

 ――なんで、この少女がここにいる。

「あれ? ドーリー?」

 背後から驚いたような声を上げるトーガに向かって、ドーリーは「来ちゃった」ときれいな顔を微笑みに変えた。
 その顔は確かに昼間見た顔なのに、今は雰囲気がまったく違っている。
 私はあまりの気味悪さに鳥肌がたった腕をさすった。

「どうしたの? また明日っていったじゃん」
「だって明日になる前にいなくなってたら困ると思ったの」
「いなくならないよ、ドーリーはせっかちだなあ」

 無邪気に声をかけるトーガは、今の状況がどれだけ不自然なのかまるでわかっていない。
 後ろから走ってきたトーガを背にかばう。

「……なぜ、この場所がわかったの」

 町で夕方に別れてから、尾行されているような気配はなかった。
 なのになんでここにいる。
 問えば、ドーリーはくすくすと笑う。

「――教えてもらったの」

 ぎゅっとトーガを抑える腕に力が入った。

「なんの、用なの」

 答えはなかった。

「チルは……チルをどうしたの」

 外で気配を失ったチル。
 外からやってきたドーリーに話を聞いたほうが早い。
 まさか、こんな少女にチルがやられるはずがない。だから、半分カマかけだった。
 しかし、その名前を口にした瞬間、ドーリーはまるで獲物を見つけた肉食動物のように目をぎらつかせて口角を上げた。

「――寝ているわ」

 嘘だ!

 カッとなった私は、〈氷片〉を出そうとした。一度捕らえて詳しく話を聞こうと思ったのだ。
 だけど、叶わなかった。

「なんだ。しょうがないなーチルは」

 トーガは私を押しのけ、ドーリーの元へ走った。

「だめ!」

 咄嗟に伸ばした私の手が空を切り、トーガがドーリーのもとへ着いたその時。
 りいいいいいん、という大きな音が鳴り、それに重なるようにバチバチと雷音が響いた。
 その後焦げた匂いが一瞬であたりに漂い、トーガはそのまま崩れ窓枠に引っかかるようにして倒れた。

「お、前―――!!」

 目の前で起こったことに一気に頭が熱くなった。
 その熱さを抱えたまま私は音を出した。すぐに形作る〈氷片〉の切っ先をドーリーに向けるが、ドーリーは驚いた様子もなくトーガを蹴った。
 蹴られたトーガは外へ落ちていく。

それ・・を下ろしなさい。さもなくば殺すわよ。ふたりともね」

 ドーリーは手に持った楕円形の何かを振りながら、爬虫類を思わせるようなねっとりした視線を私に向けた。
 私は葛藤しつつも口を閉じざるをえなかった。

「そう、いい子ねぇ。歌わなければもっといい子。傷はつけたくないから、おとなしく降りて欲しいわ」

 カシャンカシャンと氷の割れる音を聞きながら、私は目の前の少女を睨んだ。

 この少女は誰だ。
 少女? ――いいや、そんなかわいいものなんかじゃない。
 昼間とはまったく違う、捕食者のような不気味な表情で見下したまま、女は外に消えた。

「な、あ……?!」

 窓枠に手をかけると、見えてくる光景に呆然とした。
 そこにはたくさんの人たちが武器を持って宇宙船を囲んでいたのだ。
 なぜ、こんなに人がいるのに気がつかなかったのだろう。
 おかしいと目を擦っても景色は変らない。そこにいる人間からも気配は感じない。
 感じないということは消しているのだ。わざわざ、こちらに気配を悟らせないために。
 それは普通の人間のすることではない。

 ただの強盗なら、こんなまどろっこしい方法なぞ取らずに襲ってきているはずだ。
 さっさと殺して荷物を奪えばいい。
 なぜ、それをしない。

「降りてきなさい! ふたりがどうなってもいいの!?」

 声を上げるドーリーとは対照的に、周りの人間はニヤニヤと笑っているだけ。
 くそ、目がよければ、二人の姿がはっきり見えれば、今すぐにでもみんな倒せるのに。
 異様な光景の中、私は窓枠に手をかけた。手は震えていた。

「大丈夫。ちゃんと降りてここに来なさい。そうしたら殺さないわ」

 優しくなだめるように言うドーリーの声は、昼に聞いた声と同じものだった。
 吐き気がする。
 ムカムカとしてくる胸元を押さえながら、私は飛んだ。

 下りれば思ったとおり、男達が取り囲む。しかしそれ以上はなにもしてこない。
 無視して歩き、ドーリーの元に行くとチルとトーガが並んで横たわっていた。
 チルの服は焦げたように黒くなっている。

 ――トーガと同じようにされたのか。

 目の前が真っ赤になり、ぎりっと奥歯をかみ締めた。

「……いい子ね。これをつけなさい。そうしたらこのふたりは助けてあげる」

 ニィ、と笑うドーリーが差し出したのは首輪だった。
 その瞬間、なにもかもが頭の中を駆け巡った。

『母さんだって言ってたでしょ? 隠しなさいって』
『お……前、セーリヤ……人かよ』
『目つけられたら終わりだぞ』
『傷はつけたくないから』
『――教えてもらったの』

 その首輪は、【奴隷】用の首輪だ。
 見たことがあるから間違いない。

 ――そうか。狙いは――【セーリヤ人】か。

 なら、こいつらは全員、奴隷商人か。
 頭の中は一気に冷えた。

「早くつけなさい? なにを迷うの? どうなってもいいのかしら」

 ドーリーがトーガの身体を蹴りつける。
 怒りのあまり、掴みかかってしまいたい衝動に駆られた。
 けれどそれを必死に抑え込み、睨みつける。

 そんなことをしたって、チルやトーガのようになるだけだ。
 落ち着け。
 幸いにも二人は倒れている。なら、立っている全員に向けて〈壁〉を出せば逃げられるはずだ。
 うまく歌えば皆死――。

 そう考えた時間が躊躇いだったのだろう。
 息が、音になる瞬間、後ろから毛深い手が私の顔を覆った。

「ふふふふっ、アンタこの状況でどうにかなると思ったの? 甘いねえ。笑っちゃう」

 覗きこんでくる女は至極楽しそうに顔を歪めて笑った。

「――!? ――――!!!!」

 口をふさがれてしまえば私は無力だ。
 抵抗もむなしく縛り上げられ、そして――『カチリ』と音を立てて、私の首に首輪がはめられた。

「ほら口を開けなさい!」

 大抵の首輪は一度はめられたら自力はおろか、飼い主以外がはずそうとすると最悪死に至る。それが奴隷用の首輪で、私たちが最も避けなければならないものだった。
 私は泣きながら歯を食いしばったが、鼻を押さえられ息ができなくなったところで口が開いた。すると布のようなものを強引に詰め込まれ、喉近く達した異物に吐き気がこみ上げ、それがまた涙を流させた。
 ドーリーは私を双子の隣に転がすと、トーガの頭を足蹴にして懐からタバコを取り出した。

「手間がかかったわァ。恐竜並みの電落としても気絶しないんだもの。サイヤ人って化け物ね」
「ははは、相手が子どもだけで助かりましたな。姉さん」

 傍らにいる男がタバコに火をつけながら笑う。
 タバコに口をつけるドーリーは姿こそ少女だったが、成人をとっくに過ぎているように思わせる雰囲気をまとっていた。

「まったくよ。バカな子どもでよかったわ。……【壁使い】のセーリヤ人なら一生遊んで暮らせる額が手に入る。アンタの弟と妹も半分とはいえセーリヤ人だし、かわいい顔してるからさぞいい値がつくでしょうねえ」

 ふーっと私に向かって煙を吐くこの女をこの瞬間に殺せたらどれだけいいか。
 汚い足の下にあるトーガの頭。その付け根にある羽がかすかに動いているのが目に入り、私はぼろぼろと涙をこぼした。
 それを見たドーリーは下品そうに笑い、声を張り上げた。

「アンタたち、宇宙船ばらして頂戴! 中身もちゃんと取んのよ」
「!!」

 周りの奴らが笑いながら宇宙船に向かっていく。

 やめろ! それに触るな!

 たまらず反動をつけて起き上がり、叫んだ。
 地面を這えばもがく度に縄が肌に食い込む。
 服は土で汚れているだろう。
 かまわなかった。

「アハッ! アンタ本当にセーリヤ人? ……虫みたい。醜いわねえ」

 見下して笑う少女には、出会ったときのような慎ましさなんて微塵もない。
 まさに人買いの顔だった。
 そんなドーリーを睨みつけ口の中の異物を取ろうとしていると、彼女はしゃがみこんだ。
 そして私の顔を覗き込み、出会ったときのような慎ましやかさでもって微笑んだ。

「ああ、お礼を言うのを忘れてたわ。――どうもありがとう。わざわざ
奴隷商人の星に商品になりに
来てくれて」

 息を飲み、頭が真っ白になって、叫んだ。

「―――――!!」

 どれだけ恨みがましく叫んでも、口からはくぐもった声しか出ない。
 それでも私はやめることができなかった。

「なんて声なの……っ、押さえなさい!」

 知らない手が私の頭を掴み、地面に押さえつける。
 そこで私のわずかな抵抗は終りを告げた。
 体に食い込む縄は痺れるくらい痛いし、涙がつたった跡には土が付いてる気がする。

「起きる前にさっさと二人にもつけたほうがいいわね。ちょっと! ほかの首輪は?」

 絶望的な言葉に嘆き、自分を呪った。
 弟妹のふたりに決してつけたくなかった首輪がはまる。そんなことは、耐えられることではなかった。

 やめて、やめて、やめて。
 舌の回らない口の中で何度も何度も反芻する。
 けれど頭を押さえつける力が強くなり、それすらもできなくなる。

 離れてたところから聞こえてくるドーリーの勝ち誇った甲高い声と、宇宙船に入っていく足音、そのすべてが私から力を奪っていく。
 口に詰め込まれた異物の横からたらりと伝う液体の感触が、もう自分にはできることがないのだと思い知らせている気がした。

 ――――いくら泣いただろう。
 とめどなく流れ続ける涙は時を知らせてはくれない。
 長かったような、一瞬だったような時が過ぎた後、唐突に私の頭を押さえつけていた暴力がなくなった。

「ぐぇっ」「ぎゃ」「おごっ」

 同時に悲鳴が聞こえた。
 ゆっくりと頭を上げると、周りの人間が地面に倒れていた。

 ――?
 なにが起こったのか理解できずに見回すと、一点で視線が止まった。
 大きな月が天を覆い、その下に誰かいる。

 見ただけでは誰かはわからなかった。
 涙をぬぐうこともできない私の目はぼやけている。
 けれど、そこに立っている人はよく知っている気配を纏っていて――でも、知っているよりも大きい、まるで太陽みたいな気配でこちらを見ているような気がした。

「ト、トーガ……!? なに、なんなの……!?」

 驚愕したようなドーリーの声が聞こえた。

「さっきから……うるさい」

 トーガはそう言うなり、その場から気配を消した。
 ――と、同時にまた悲鳴が上がる。

「ヒイ! まっ!?」
「ぐうっ! ぅご!!」
「くそが、ぁ!」
「……や、やめてくれっ! たのッ!!」

 消えたと思ったトーガの気配は、消えてすぐに現れるのを繰り返しながら他の気配めがけて飛んでいく。
 当たった人は気配を無くす。

 なにが起こっているのか、一瞬では理解できなかった。
 だって見えない。この目には倒れていく人間さえぼやけて映る。
 遠くで消えていく気配と悲鳴が上がるのを聞いた後、やっとじわじわとわかってきた。
 ――殺してる。

 トーガが人を殺している。

「む―――! むぐううう!!」

 ただの不明瞭な音だけが口から発せられる。
 それでも叫ばずにはいられなかった。

 だって、人を殺すだなんて、そんなことできるわけがない。
 ただ力が強い、喧嘩ごっこが好きな、かわいい女の子に誘われて行っちゃうような、普通の男の子だったはずだ。
 なのに。
 辺りからは怒号と悲鳴が上がり、たくさんの気配が消えていく。

 まるで蟻でも潰すように一瞬で命を絶っていくトーガは全くの別人のようだ。
 相手が悲鳴をあげようが、命乞いをしようが構わない。

 殺してやると思っていたのに、それが目の前で行われているという現実。
 しかもトーガは私のように〈壁〉を使えるわけじゃない。
 純粋な力のみで殺している。

 絶え間なく聞こえる悲鳴、身体の裂けるような音、折れるような音、……つぶれる音。
 耳に入ってくる音が、否応にも恐怖心を駆りたてる。

 まだ子どもなのに、弟なのに、助けてくれているのに――。
 私の身体はカタカタと震えた。

「ト、トーガ、やめて、お願い。……殺さないで!」

 どことなく媚びるような、それでいて切実そうなドーリーの声が聞こえてハッとする。

「だめだよ」

 トーガの声が淡々と答えた。

 その感情の平坦さに、ぞくりと肌が粟立つ。
 ――だめだ。
 私は反射的に、前へ進もうと震える身体をよじった。

「く、首輪ははずすから! もうしないから! お願い!!」

 ドーリーは悲痛な叫びを上げて、トーガに訴えた。
 私も、呻くようなくぐもった声でトーガを止めようとした。

 ――トーガ。
 その人を殺してはだめだ。
 一時でも好きだった人を殺してはだめだ。そんなことをしてはだめだ。
 やるなら私がやる。
 だからトーガ、こっちを向いて!

 そんな願いも虚しく、トーガは感情のこもらない声で怯える少女に向かって言った。

「だめだって。とうさんに言われたんだから」

 その瞬間、ドーリーが何かを言おうとした。しかし、言葉は意味をなす前に途切れた。
 そして私の首に収まっていた首輪は、主人を失って地面に落ちていく。
 トーガはその後、ぼそりと呟いた。

「悪いやつは倒さなきゃ」

 トーガは潜んでいたであろう人間を殺しまわった。
 その死体を積み上げて、積み上げて、積み上げて……一つの大きな山ができたとき、止まった。
 動くものはなくなった。
 私はずっとトーガの後姿を見つめ続けていた。
 耳が痛いくらい無音になった世界がしばらく続いた後、ガサガサと草が揺れる音がした。
 そして白いものが跳ね、トーガの頭の上に乗った。

「むむ……」

 シロ、と名前を呼ぼうにも依然布は口内に押し込められたままで、不明瞭な響きが空気に溶けていく。
 そこでトーガがゆっくりと私に振り返った。
 血まみれのトーガは、困ったような、泣きそうな顔をしながら歩き、目の前にやってくると縄に手をかけた。
 その際、つい身体が震えてしまう。
 ――だめだ。落ち着かないと。

「トーガ………………だ……大丈夫?」

 口の布を取っ払らわれた私は、そんなありきたりな言葉しかかけられなかった。

「おねえちゃん。ごめん、ごめんなさい……」

 トーガは顔をくしゃくしゃにして震えながら泣きだした。
 その様子はさっきとはまるで違っていて、私は自然と安堵の息を吐いた。

「……チル!」

 自由になった身ですぐさま隣のチルの肩を揺らす。
 返事はなかった。

「トーガ、チルの縄を切って!」

 その間に体温や脈を測り、傷がどこにあるのか調べた。
 幸いにも意識がないだけで傷以外に異常はなかったけれど、その傷がとてつもなく腹立たしいものだった。
 押し当てられたのは背中のようで、背後から襲われたのがよくわかる。
 衣服が裂け、肌に焼けたような傷ができていた。いくつも傷があることから、チルは複数回あれを押し当てられたんだろう。
 それを見てトーガは更にわんわんと泣き出してしまった。
 沈静化した怒りが再燃しかけたが、それを振り払ってトーガに向き直った。

「トーガはどこをやられたの!?」

 思い出しながらドーリーに押し当てられた傷を探す。
「やだ! やだ!」と泣くトーガに構わず見てみると、傷は一箇所だけだった。しかしチルよりもひどい火傷になっていた。

 あの女……チルで試しやがったな……。
 ぐるぐると渦巻く殺意を伴った憤りは、もうぶつける事も叶わない。
 私は立ち上がると、宇宙船に向かった。

 宇宙船は荷物を運び出されただけで解体には至っていなかった。
 放り出された荷物の中から光塩を探し出し取り出すとバケツに放り込んだ。
 光塩は火傷に効く。水に溶かし、トーガに塗れとバケツを手渡した。
 浸した手ぬぐいをチルの背中に乗せようとしたとき、ふと気になった。

「ん……?」

 気になった場所は、山だった。
 トーガが築いた死体の山。そこから、気配を感じた。
 数人、生きている。
 かすかに聞こえる息遣いはまるで怯えているようだ。

「……おねえちゃ? どうし……」

 トーガの声には応えず、私はその死体の山を〈壁〉で切り刻んだ。
 今度は躊躇ったりしない。逃げられないように、確実に、細かく、何回も。
 生きていたら追われる。
 そしたらまた―――――。

 恐れにも似た思いが私を奮い立たせて、喉は歌を紡いだ。
 血まみれの、細切れた肉片の山ができたところで私は言った。

「早くでよう。この星から」

 他に誰か来る前に。

 そんな意味も込めて言うと、トーガは泣き叫んだ。


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